1994年から政府開発援助(ODA)の一環として、「簡易操作型電子設計・生産支援システム(MATIC)」に関する共同研究を中国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイと共同で実施した。
(*新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託)

はじめに 
プロジェクトの背景
プロジェクトの立ち上げ
プロジェクトの実施体制 
プロジェクトの研究課題 
プロジェクトのスケジュール 
分野別の研究開発概要 
参考 




 「MATIC」は、MAnufacturing Technology supported by advanced and integrated Information system through international Cooperationの略で、「簡易操作型電子設計・生産支援システム」と称している。すなわち、国際的な情報システムやCAD/CAMシステムのようなシステムを含む先進的な統合情報システムに支援された未来指向の製造技術である。
 「MATICプロジェクト」は、MATICに関する国際的な共同研究開発プロジェクトであり、研究開発期間としては、1994年度から5年間行った。
 CICCは、日本における実施機関としてMATICプロジェクトを実施している。その実施に際しては、国内の多数の機関や企業はもとより、中国、インドネシア、マレーシア、シンガポール及びタイの機関・企業の協力を得ている。 




 アジア、特に東アジアは、世界の生産基地として極めて重要な役割を果たしてきている。この地域で生産された低価格で高品質の製品は、世界の生産効率を高め、企業収益を高め、生活水準の改善に貢献してきている。
 その結果、近年、東アジアは世界の成長センターとなり、日本や欧米の投資先となっている。成長や投資の焦点は、自動車、家電、繊維等の製造業である。しかしながら、さらに発展を続けるために克服しなければならない課題が多数ある。例えば、労働コストの上昇、製品開発期間の短縮化、より洗練された製品に対する需要などである。
 他方、情報技術の発展・進歩には、めざましいものがある。情報技術を採用した製品、システム、サービスは世界中で増加・普及している。特に、パソコンやワークステーションは、容易に利用可能となり、インターネットのような国際的な情報ネットワークが一般化しつつある。設計・製造の分野では、先進的なCAD/CAMシステム、数値制御工作機械、ロボット等が広く利用されている。
 このような環境下で、洗練された製品、設計や製造準備期間の短縮化、部品調達の適正化等に対する期待が高まっている。設計や製造工程に情報システムや他の技術を導入してこのような期待に応えることが可能となってきている。


図1 プロジェクトの背景



 このような課題を解決し、新しい需要に応えるためには、情報技術は最も重要な要素のひとつであると考えた。情報技術の応用、研究課題、研究体制等に関する予備的な検討を行い、最終的に新しい共同研究開発プロジェクトの提案を行った。通商産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこの提案を支持し、CICCは関係国に共同研究への参加の可能性を打診した。
 MATICプロジェクトは平成6年(1994年)に誕生し、中国、インドネシア、マレーシア、シンガポール及びタイが参加した。


図2 プロジェクトの立ち上げ



 プロジェクトの実施体制を図3に示す。プロジェクトは、CICCと参加各国の研究機関との共同研究によって実施した。すなわち、NEDOと各国の機関が個別にMATICプロジェクトに関する覚書(MOU)を締結し、この覚書に従って研究者の相互派遣や連携が行われた。
 NEDOは、中国の電子工業部SOPIS、インドネシアのBPPT、マレーシアのSIRIM、シンガポールのNSTB、タイのNECTECとプロジェクトの実施について合意した。シンガポールのNSTBは、Ginticを実施機関に指定している。

 

MITI : Ministry of International Trade and Industry
NEDO : New Energy and Industrial Technology Development Organization
CICC : Center of the International Cooperation for Computerization
SOPIS : The State Office for Promotion of Electronics and Information System
BPPT : Agency for The Assessment and Application of Technology
SIRIM : Standard and Industrial Research Institute of Malaysia Berhad
NSTB : National Science and Technology Board
GIMT : Gintic Institute of Manufacturing Technology 
NECTEC : National Electronic and Computer Technology Center 


図3 プロジェクトの実施体制


 国内では、トップレベルの審議機関として、生産系未来型統合情報化技術検討委員会が設置された。通商産業省からの補助金を受けて、NEDOはプロジェクトの実施に責任を有する立場にある。NEDOはCICCをプロジェクトの実施機関に指名し、実施業務を委託した。
 CICCは、プロジェクトを実施するために、MATIC協力推進委員会、MATIC運営委員会及びMATIC技術委員会を設置し、さらにMATIC技術委員会のしたに3つのワーキング・グループを設置した。すなわち、自動車及び同部品のWG1、家電及び同部品のWG2及び繊維・アパレルのWG3である。これらの関係企業及びコンピュータ企業からの研究者や技術者が各委員会及び各WGに参加した。


図4 プロジェクトの国内実施体制



 MATICのための情報システムは、統合型製品データ管理ネットワーク・システムと一般的に呼ばれている。MATICプロジェクトでは、各WGが、プロトタイプ・システムを開発し、このシステムを使用して実証実験をする。したがって、統合型製品データ管理ネットワーク・システムが最初の課題として挙げられた。
 2番目の課題は、データ交換である。データ交換は、ほとんどの場合、同じ情報システム内では容易にできる。今日、異なったパソコンやワークステーションで多くの人が電子メールを交換している。MATICにとって、製品モデルに関するデータやドキュメント・データの交換が必要である。さらに、EDI(電子データ交換)も実現できるであろう。このようなデータ交換が、企業(グループ)や国境を越えて可能となった。
 3番目の課題は、コンカレント・エンジニアリングである。MATICは、設計や製造工程を支援するが、このような活動は世界的に展開された。同時に、製造企業は、製品設計や製造準備の期間の短縮化を図っている。この観点から、コンカレント・エンジニアリングは重要な鍵となった。
 4番目は、共通部品ライブラリ(データベース)である。設計や製造工程では、設計者・技術者は、多くの部品データを必要とする。そのデータは、内外のライブラリ(データベース)に蓄積されている。その重複を避けるために、共通部品ライブラリの開発が考えられる。
 他の課題としては、操作性、インターフェイス、翻訳等がある。




 図5にプロジェクトの簡単なスケジュールを示す。平成6年度(1994年度)に自動車、家電、繊維・アパレルについてのケース・スタディが行われた。平成7、8年度(95、96年度)は、研究開発の基本計画が策定された。平成8〜10年度(96〜98年度)にはプロトタイプ情報システムが開発されて、平成9年(97年)には実証試験が始まった。  


平成6年度(1994年度) 可能性調査
平成7年度(1995年度) 要件分析、基本計画、基本設計
平成8年度(1996年度) 基本設計、プロトタイプ・システム開発
平成9年度(1997年度) プロトタイプ・システム開発、実証実験
平成10年度(1998年度) プロトタイプ・システム開発、実証実験

図5 プロジェクトのスケジュール



 プロジェクトは、自動車及び同部品、家電及び同部品、繊維・アパレルの3分野に焦点をあてている。これらの各分野に対応してワーキング・グループが設けられた。
 

 自動車分野(WG1)にとって、中心課題は世界中に展開している企業間でのデータ共有でさる。データ共有システムは2つの大きな変化をもたらす。ひとつは国際的な労働分業で、もうひとつは並行作業化である。また、データ共有システムは、生産へのリードタイムの短縮化、コストの削減及び高品質化に貢献する。
 自動車は、3つの主要部品から構成されている。車体、エンジン・シャーシ及び樹脂部品である。多くのこうした部品が組み立てられ、検査されて最終製品となる。その全体の製造工程は長く、膨大であることから、WG1では車体の溶接工程を取り上げることとした。溶接工程の準備や実際の作業にとって、技術マニュアルが不可欠である。
 技術マニュアルは、工程フロー図と組立マニュアルから構成されている。工程フロー図は、治具を必要とする詳細な溶接工程の流れを示し、それぞれの詳細な溶接工程は、図面、溶接箇所、溶接方法の指示等を示す組立マニュアルを必要とする。
 現行システムでは、多くの技術マニュアルは郵送、ファックスにより設計部門から海外工場に送付される。提案されているシステムでは、ネットワークを通じて海外工場へ送信される。
 WG1では、プリプロトタイプ・システムを開発中であり、プロトタイプ・システムに向けての実証実験が計画されている。プリプロトタイプ及びプロトタイプ・システムを使用した実証実験は、インドネシア、タイ及び日本の間で行われた。


図6 自動車・同部品(WG1)概要図



 家電分野(WG2)では、テレビ、エアコン、電話機等のプリント基板回路の設計・テストに適用されるコンカレント・エンジニアリング(CE)及び電子部品カタログ(EPC)又は電子イエローページ(EYP)について検討している。
 EPC(EYP)は、番号・品名・種類・大きさ・性能等を内容とする部品情報と会社名・住所・電話番号、製品等を内容とする企業情報を含む。
 家電企業の設計者や技術者は、必要な部品データを、自社のデータベースや紙媒体のカタログの代わりに、インターネット経由でEPCから入手できる。
 多くの参加国は、独自にEPCのデモ用(プリプロトタイプ)システムを開発した。現在、部品や企業の情報の標準的な記述方法、プロトタイプ・システムの仕様等について研究している。
 CAD/CAMデータをEPCに追加することによって、プリント基板回路の設計・テストに適用されるコンカレント・エンジニアリング(CE)が実現できるであろう。このCEの実証実験は、マレーシアと日本との間で行うことが検討されている。



図7 家電・同部品(WG2)概要図



 繊維・アパレル分野(WG3)では、グローバルな情報ネットワーク・システムを確立することが期待されている。繊維・アパレル産業の長い流れの中で、アパレル製品の縫製工程に注目している。アパレル製品の設計と製造は日本及びアジアの異なった場所で行われている。縫製工程において、縫製技術規格書と型紙が必要である。縫製技術規格書と型紙は設計部門から海外の工場に郵送又はファックスで送付される。
 提案されているシステムでは、縫製技術規格書のデータはネットワークを通じて送信される。また、型紙を作成するためのデータも送信され、現地で作成することができる。
 提案されているシステムは、5つのサブシステムから構成されている。縫製技術規格書システム、国際EDIシステム、翻訳システム、CAD/CAMデータ交換システム及び工場データバンク・システムである。
 WG3では、いくつかの機能を有するプロトタイプ・
システムを開発中であり、中国、インドネシア及び日本との間で実証実験を行った。

図8 織維・アパレル(WG3)概要図




(1)"Matic Project" CICC SCOPE No.5, March 1996
(2)"Outline of MATIC Project" CICC SCOPE No.4, November 1995
(3)"Overview & Report on MATIC Project" at CALS Singapore'96, November 8, 1996
(4)"Outline of MATIC Project" at the 10th Asian Forum for Standardization of Information Technology (AFSIT), October 30, 1996
(5)"MATIC" Technical Session, at CALS Japan'96, October 16, 1996




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